鶏卵・フランスと日本はこのように違う

フランスは常温保存

常温保存の卵


あなたは、卵をどのように保存していますか?
一般的には、冷蔵庫で保存が多いでしょう。

フランスでは家庭でも常温保存が多いです。


日本もフランスも、店頭では卵は常温で売ら
れています。
なぜだかご存じですか?
その理由は、『結露』を防ぐためです。

たとえば、夏場など暑い時期に冷たいペット
ボトルを外に出しておくと、その周りに水滴
が付きますよね。

これが『結露』です。
卵の殻には「気孔」と呼ばれる、人には
見えないような小さい穴がたくさん開いており、
その数はなんと、7000 ~17000 個

結露によって、卵の表面に水滴が付いてしま
と、その小さい穴から雑菌が中に入り込ん
でしまう
のです。

そのため、極力卵に温度変化を加えないため
常温で売られているのです。


そのため、フランスでは卵を購入後も
冷蔵庫に入れないよう言われてきました。
ですから今でも、卵を冷蔵庫に入れない
家庭が多いです。


そしてもうひとつの理由
日本とフランスでは、出荷当時の
卵に違いが
あります。

その違いとは、出荷前の洗浄の有無

日本で店頭に並んでいる卵は、出荷前に
洗浄
されています。

次亜塩素酸ナトリウムなどの殺菌剤を添加
した温水で卵を洗浄
しすすいだ後、濡れた
殻の表面を乾燥させます。

日本で売られている卵はこのようによく
洗浄されているため、”サルモネラ菌” などが
卵の殻に付着していることはほとんどないようです。


それではなぜフランスは洗浄しないのでしょう。

理由は、自然の摂理です。

自然界に存在するすべての細菌が卵の
内部に到達したら、ヒナが生き残る可能性
はかなり低くなってしまいます。

ですから卵は『クチクラ層』という
自然のバリアで覆われています。
この薄い透明な膜は、微生物汚染に対する
シールドです。

洗浄するとこの保護膜が失われ、細菌
が増殖します。

欧州全体も同じ考えで、出荷前の洗浄は
禁止
されています。

ですから卵のパックを開けると、鶏の羽や
糞が付着していることもよくあります。



アメリカも日本と同様、洗浄してから出荷
していますが、アメリカでは、「微生物の
発生を防ぐために冷蔵庫に保管する必要が
ある」ということから、冷蔵棚に入って
売られています。


日本では「”サルモネラ菌” の心配はあり
ません」と言われていますが、そうは言って
も、サルモネラ菌の心配が 100% ないわけ
ではありません。

そのため、卵にサルモネラ菌が付着して
いた場合も考えて、細菌が増殖しないための
防止策
として冷蔵庫での保存がいいわけです。


フランスも冷蔵庫での保存を推奨



ただフランスも、最近は冷蔵庫での保存を
勧めています。

サルモネラ菌の増殖を防ぐためです。

欧州食品安全機関(EFSA)は、2014 年
「『長期保存による感染リスクの増加を軽減する
ためには、卵を冷蔵庫に保管することが不可欠
である」と公表しました。


卵は、自然保護の恩恵を受けており、
最長 21 日間保存できます。

21日間とは販売期限ではなく産卵後 21 日
のことです。

ただこれは、卵にいっさい傷がない状態です。
買い物かごの中に入れていると、卵が擦れたり
小さな傷がつくこともあります。

傷があると、そこから細菌が侵入する
可能性があり
ます。


そのうえ健康な卵の保存に適しているのは、
光が当たらず、温度が 5〜8° の場所。
ただ、家の中でこのような場所を見つけるの
はむずかしいですね。

すると、最適な場所は冷蔵庫。
もうひとつの利点は、卵は室温より冷蔵庫
の方が長持ちすること

室温では 21 日を超えてはいけませんが、
冷蔵庫では最大 6 週間保存できます。

新鮮かどうかは、『冷水テスト』でわかります。


【冷水テスト】

冷水の入った容器に卵をそっと入れるだけです。

鮮度が低いと表面に浮いてしまいます。
沈むのが早いほど、新鮮です。

  • 表面に浮かんでいる

    捨ててたほうがいいです。
  • ゆっくりと容器の底に沈む

    超新鮮ではないが、食用可。
  • すぐに容器の底に沈む
    新鮮なので、ゆで卵や半熟卵としても安心です。

ただし、このテストをした後は、早目に
消費
してください。
クチクラ層が損傷している可能性があります。


また、フランスでは冷蔵庫で保存する際、
下記のことを推奨しています。

  • 冷蔵庫のドアの内側には置かない

    通常、冷蔵庫のドアの内側には、
    卵を入れるラックがついています。

    ただ冷蔵庫のドアは、頻繁に開け
    閉めします。

    卵は温度変化に弱いため、卵を冷蔵庫
    で保存すると、冷蔵庫を開ける度、
    取り出す度に、バクテリアの増殖が
    増える可能性が高くなります。

    また常に温度変化にさらされるため、
    腐敗が早くなりますし、味も変わって
    くる可能性があります。

  • 冷蔵庫の真ん中の棚に置く

    温度が低くもならず、最も安定する
    ためです。

  • 尖ったほうを下にする

    卵の尖った面を下にして置くと、
    卵黄は中央に残り、凸面側にある空気
    室が圧縮されません。 

  • 箱で保管

    他の食品の臭いを防ぐため、入っていた
    段ボールの包装に入れたままで保管する。




卵のパックは中が見えない



これも日本とフランスの違うところ。
日本では卵は透明のプラスチックの容器
入っていますが、フランスではダンボール
というか厚紙
で出来ています。

透明なパックはありません。
ですから外から卵の状態がわからないので、
購入するときは、ほとんどの人がパックを
あけて
卵が割れていないか確かめています。




またフランスでは、パックを見れば

  • 推奨期限日

    例: DCR 02/03 (3月2日まで)
  • 梱包センター番号
  • 卵の大きさ

    S : 重さ 53 g 未満の小さな卵用。

    M : 中型卵の場合、53 ~ 63 g。

    L : 大きな卵の場合、63 ~ 73 g。

    XL : 非常に大きな卵用、73 g 以上。
  • 生産者コード

  • カテゴリー
    ほとんどA

これらがわかります。


またほとんどの卵の殻には、赤インクで
産卵日飼育方法が書かれています。



『飼育方法とコード』は以下の通りです。

  1. 有機農法 (コード 0) 

    有機飼料にて飼育
    屋外エリアにアクセスでき、屋内には
    巣や止まり木、必要な食べ物が設置されている。

  2. 地上飼育 (コード 1) 

    日中屋外で飼育。
    ラベル ルージュとも呼ばれている。

    ” BIO” とはオーガニックのことです。

3. 地上飼育 (コード 2)

外には出ないが、室内を自由に歩き
回ることが可能。



4. 設備の整ったケージで飼育 (コード 3) 

12 羽から 60 羽のグループ毎に、ケージ
内で飼育。
巣、止まり木、ついばみや爪とぎの場所
がある。

“バタリーケージ” ではない。(この後説明します)



私は、BIOの卵を買っています。
今日買ってきたのは、10 個入りで 3.41 ユーロ。
(今日のレートで 551 円)
ちょっとお安くなっていました。

フランスでも、10 個入りで1.65 ユーロ
(266 円)というのもありますが、
小さかったり、またあまり安いのはちょっと
怖いので・・・。

卵は日本より、高いかもしれません。

ちなみに、日本では白い卵と茶色の卵と
2 種類ありますが、フランスの卵は茶色
の卵だけです。



アニマルウェルフェアの認識の違い

「アニマルウェルフェア」という言葉を
耳にしたことはあるでしょうか。

動物を「感受性のある存在」と捉え、家畜に
とって “ストレスや苦痛の少ない飼育環境” を
目指す考え方
のことです。

ペットや実験動物など、あらゆる動物に対す
る現在の動物福祉政策の基準であり、国際的
な共通認識となっているのが、下記の
『5つの自由』

  • 飢え、渇き及び栄養不良からの自由
  • 恐怖及び苦悩からの自由
  • 物理的、熱の不快さからの自由
  • 苦痛、傷害及び疾病からの自由
  • 通常の行動様式を発現する自由

日本を含む世界 182 の国と地域が参加する
政府間機関であるOIE(国際獣疫事務局)が、
科学的知見に基づき、AW(アニマルウェア
フェア)のルールを定めています。

しかし、各国の取り組みレベルには、大き
な差があるのが現状です。


日本の採卵養鶏場の 92 %が採用している
『バタリーケージ』

フランスでは、2012 年に廃止しています。
これは、欧州連合(EU)の鶏舎指令の規定
に基づくもの
です。


『バタリーケージ』鶏にとって苦痛
与えるものでしかありません。

何段も積み重ねられた、ワイヤーでできた
金網の中に鶏を入れ飼育する方式です。

鶏のまわりはすべて金網で囲まれており、
糞が下に落ちるように、床も粗い目の金網に
なっています。

卵が転がりやすいよう、ケージは傾斜しています。

1 羽当たりの面積は、20 cm× 20 cm程度。
タブレット端末 1 枚分ほどです。


鶏は本来朝起きたら羽ばたきし、毛づくろい
をし、砂浴びをして羽をきれいにします。

一日に 10,000 から 15,000 回地面をつつき、
採食・探索する動物です。

バタリーケージには止まり木も、巣も
砂場も設置されていません。


ただそのような中でも本来の本能から
巣を作る真似をしたり、
しばしば給餌箱に頭をつっこみながら、
両翼を動かし、砂浴びの真似事をします。

結果、羽は汚れ、金網ですれ切れ、
土の上を歩いていれば自然に擦り切れる爪は、
伸びきり、金網にからまります。


EUでも、ケージ飼育そのものは禁止されて
いません

ただ上記3.で書いたように、ケージの中には
巣、止まり木、ついばみや爪とぎの場所が
あります。

EUの法律では、ケージの高さは、
最低 45 cmとしています。

ただこの高さでは、鶏は首を伸ばしたり、
羽ばたいたり、身体を揺らしたりなどの
当たりまえの運動は満足にできません。

このような動きは、鶏たちの羽骨を強くす
るために欠かせないもの。

研究結果では、高さに制約がなければ、
鶏は高さ 56 cmまで活動するようです。


また『バタリーケージ』では、【デビーク】
【強制換羽】などがおこなわれています。


【デビークとは】

過密飼育によるつつき合いを防ぐために、
雛の段階で鶏のクチバシを麻酔なしで切断
することです。

日本の採卵養鶏約 83.7 %で実施されています。
デビーク時には出血し、雛は痛みで苦しみます。

飼育密度が高くなると攻撃的なつつきが発生
しやすくなり、”平飼い” では軽減するようです。



【強制換羽】

鶏に 2 週間程度、絶食などの給餌制限をおこ
ない、栄養不足にさせ、新しい羽を強制的に
抜け変わらせ
ます。

「換羽期に羽毛が抜けかわると、再び卵を産む
ようになる」という鶏の生態を利用し、
卵の質を均一にし、生産効率を上げるためです。

鶏は産卵を開始して約1年が経過すると、
卵質や産卵率が低下し、不揃いな卵を産む
ようになります。

この時点で、と殺される場合もありますが、
長期にわたって飼養しようとする場合には
このように『強制換羽』がおこなわれるのです。

強制換羽は、日本の採卵養鶏の 66.1 %で
実施されていますが、衰弱や餓死
より、通常の鶏飼育時よりも死亡率が高い
ことが知られています。


またこのような狭いところでは、鶏は
ストレスから体の抵抗力が弱り、病気に
かかりやすくなります。

そのため、ワクチン抗生物質を混ぜた餌
与えられたり、薬剤を散布されたりします。

また安く飼育するため、遺伝子組み換えの
とうもろこしも飼料
として与えられています。

遺伝子組み換え農作物アレルギー免疫
疾患
不妊など様々な健康へのリスクが懸念
される調査結果もあり、ヒトの健康に及ぼす
影響が未知であるといわれています。


フランスでも生卵は食べます

「生卵を食べるのは日本だけ」
「海外では生卵は食べない」

よくこのように言われますが、フランスで
も生卵は食べます。

ただ日本の「卵かけごはん」と違い、
使うのはほとんど黄身だけ。

マヨネーズ、ベアルネーズ・ソース
クレーム・アングレーズ(Crème Anglaise)
チョコレートムース・ティラミスなど。

そして、ブルターニュ式(そば粉)のガレット。


各国の 2020 年の年間 1 人当たり鶏卵
消費量
では、日本は 2 位
一人当たり、340 個となっており、
ほとんど毎日食べている計算です。

フランスは、229 個でした。


卵は『完全栄養食』としても知られています。
卵には、タンパク質、多くのビタミン
セレンなど多くの栄養素がバランスよく
含まれて
います。

でも、『からだに悪い卵』があるのも事実です。
毎日食べるものですので、こだわりを持ちたいですね。
安いものには、それなりに理由があるわけです。

卵はできれば、オーガニック平飼い
鶏を地面に放して飼う養鶏法
の卵を買いたいものです。




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