母の心情:子供が遠くへ行くとき
今朝、娘が旅立った。
駅に送りに行き、娘が乗った電車が動き
出したとたん、涙が出てきた。
娘には見せたくなかった涙だけれど、
電車が動いたら、我慢できなくなっちゃった。
でも多分「娘は私の涙は見ていない」と思っている。
娘がフランスから出国するのは 1 週間後
だけれど、娘の出国前に会うことはもうないと思う。
1 年後に会えるかどうか、それもわからない。
母のことを思い出した。
私がヨーロッパに住んでから時々日本には
帰っていたけれど、毎年帰っていたわけでは
なかった。
まず、飛行機代が高い。
それに帰ると 3 週間ぐらい滞在していた
ので、仕事もあり、そう頻繁には帰れなかった。
また日本に帰るより、ヨーロッパの生活の
ほうが面白かったということもあったし。
日本から帰るとき、母は飛行場まで
送りにきてくれた。
家から成田まではけっこうあったけれど、
母としては、なるべく私と一緒にいたかった
のだろうと思う。
今日の私みたいに。
戻る先が日本国内ならば違うだろうけれど、
私が戻る所は外国。
それも地球の反対側だったし。
今から 40 年ほど前だから、インターネット
などないし、スマホももちろん無い。
連絡を取る手段は、電話か手紙。
その頃はスイスにいたけれど、日本に電話を
かけると 1 分 700円ぐらいしたと思う。
とにかく電話代が高かった。
久しぶりに電話をすると、母としては
話したいことがたくさんあるから、どう
しても長くなる。
こちらとしても話したいのはやまやまなの
だけれど、電話料金も気になる。
だから当然、電話の回数も減ってしまう。
もうひとつの手段は手紙だったけれど、手紙は
あまり書かなかった。
どこかに旅行に行ったときに、絵葉書を
送ったぐらい。
そう考えると、今は便利になったよね。
外国にいても目の前で話しているように
顔を見ながら話すこともできる。
それにSNSならいつでもメッセージを送れる。
でも・・・やはり別れとなると、灌漑深いものがある。
去る者と残る者・心情の違い
こういうとき、去る方はそれほど寂しくは
感じないものだけれど、残される方はとても
寂しく感じるもの。
私が日本を去るとき、私は母との
別れがそれほど寂しいとは感じなかった。
かえってヨーロッパに帰ることを
楽しみにしていたと思う。
母と別れる際に寂しいと強く感じたのは、
母が遊びにきて、帰るため飛行場まで送って
行ったとき。
飛行場で母の姿が見えなくなったときに、
今迄になくとても寂しく感じ、涙が浮かんだ
のを覚えている。
ただそのとき母は、私のような寂しさは
感じていなかった。
これからひとりで慣れない飛行機に乗って、
日本迄帰らなければならない。
だから寂しさよりも、そちらの心配のほうが
強かったんだと思う。
今回娘は、シドニーで今までとは違う、
あらたな生活が始まることになる。
着いてすぐ住居探しから始まり、あとの
ことは私にはわからない。
母親としては、「健康で問題なくやって
ほしい」と思うが、私ができることは何もない。
母親の立場からすれば心配だけど、でも
よく考えれば、今は私より娘のほうがよく
知っていることが多い。
だからそれほど心配することはないのだろう
けれど、これは性格。
仕方ないね。
でも家を出る前に「これ忘れているんじゃ
ない?」と差し出した物もあり、「やっぱり
ひとりじゃ心許ないな~」なんて思う
こともあったりして・・・。
でも娘の新たな旅立ちに、母としてエールを
送らなければね。
長く生きていれば、別れは大なり小なり
いくつも経験すること。
これからもこのような気持になることは、
何回もあると思う。
駅にはムッシューも一緒に来ていたけれど、
私が涙を見せたときはいなかった。
ムッシューは既に立ち去っていたから。
その理由を私は知っている。
娘に涙を見せたくないから。
私は「また長い間会えなくなるのだから、
できるだけ長くいたい」と思っていたから、
電車が動くまでいたのだが、
ムッシューは「涙を見せたくないから」と
涙が出る前にその場を立ち去った。
どちらがいいかわからないけれど、
人それぞれだからね。
新たな章の始まり
私はまた以前の生活に戻る。
娘がいなくなって寂しい気持ちはあるけれど、
これから自分のやりたいことに集中できる、
という気持ちがあることも確か。
けっきょく人って、自分の都合のいいように
考える生き物なんだよね。
でもそれがいいのだろうと思う。
いつまでも同じ気持ちをひきずっていては、
前に進めないから。
今日はこれから洗濯。
娘が洗濯物をいっぱい置いていった。
シーツなど大きなものもある。
さあ、今から目標に向かって頑張らなければ・・・。
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