青は、砂漠の民の色
午後 6 時になったので、宿の人に案内され、
砂漠に向かいました。
宿の目の前が砂漠ですので、ほんの少し
歩いただけですが・・・。
そこで、今日案内してくれる男性を紹介
されました。
歳は 60 代でしょうか。
名前は “モハメッド”。
彼が、わたしのラクダを引いてくれます。
宿の人も “モハメッド” でしたが、
モロッコに来てから、何人目のモハメッドか。
今まで会った人は、この名前が多かったです。
宿の人とはそこで別れ、ラクダに乗る前に、
彼にフェズで購入したスカーフを巻いて
もらいました。
巻き方は、ベルベル巻きです。
砂漠は時折、強い風が吹きます。
しっかりと巻いておかないと、細かい砂が
目や鼻に入ってくるのです。
髪の毛も覆っておかないと、砂だらけに
なってしまいます。
今回、わたしが砂漠用に購入した衣類は、
青で統一していました。
ですからスカーフも、青です。
なぜか、砂漠には青が合う気がしたので・・・。
後になって、違う町のガイドから教えて
もらったのですが、青は「砂漠の民」の色でした。
「砂漠の民」として知られるベルベル人系に
“トゥアレグ族” と呼ばれる民族がいます。
彼らは、北アフリカに古来より住んでいる
ベルベル人の子孫だそうです。
“トゥアレグ族” の男性は、青い布で顔を覆う
ことで知られており、現在は「青の民族」
とも呼ばれています。
ラクダ引きの男性は、ベルベル人でした。
彼のターバンは白でしたが、ジュラバは青。
昔からこの辺りに住んでいるようです。
砂漠地帯には、ベルベル人が多いようで、
アラブ人と違い、肌が白いです。
性格も、比較的穏やかな人が多いように
感じました。
彼らは、自分達の文化や言語をとても
だいじにしています。
ベルベル語しか話せない人もいるようです
が、ほとんどの人は、ベルベル語とアラビア
語を話すようです。
この男性はベルベル語とアラビア語の他、
フランス語も少しできました。
ラクダに乗って砂漠にGO!
ラクダ引きの彼が、1 頭のラクダを
連れてきました。
わたしが乗れるよう、ラクダを座らせます。
ラクダの座り方って、可愛いいです。
持ち手につかまって、ラクダにまたがります。
「乗れた」と、聞かれました。
「OK」と返事をすると、今度は男性の
合図で、ラクダが起き上がります。
ラクダは後ろ足から立ち上がり、その後
前足を伸ばして起き上がります。
このとき前のめりになるので、しっかり
持ち手を握っていないと落ちてしまいます。
わたしは、ラクダは以前にも乗ったことが
あるので、問題ありませんでした。
この後、1 時間以上ラクダに揺られて
歩きます。
このように長時間、ラクダに乗るのは
初めて。
ラクダ引きの男性は、ゆっくりとラクダを
先導して歩いていきます。
わたしもそのうち、乗るのに慣れてきました。
このラクダは、1 才のひとこぶラクダ。
名前も聞いたのですが、忘れました。
しばらくすると、足にバチン、バチンと
何かが当たるのです。
ムチで打たれているような感じ。
何かと思ったら、ラクダの尻尾でした。
ラクダの尻尾って、固いのですね。
打たれても痛くはないのですが・・・。
ハエでも追っているのかと思ったのですが、
砂漠にハエはいません。
もしかしたら嫌がらせ?
じつはこのラクダ、若いせいか、背中に
人を乗せたくないようなのです。
わたしが乗ろうとすると、毎回噛もうと
するのです。
その度に、ラクダ引きの男性がたしなめて
くれるのですが・・・。
ラクダに乗り、辺りを見回すと・・・。
見渡す限り砂、砂、砂。
当たり前ですが・・・。
果てしなく続く砂の山が、遥か彼方まで
続いています。
この彼方は、アルジェリアだそうです。
ラクダに揺られていると、何回か
「大丈夫?」と声をかけられました。
「お尻が痛くなる」という声もネットに
載っていたのですが、わたしは大丈夫でした。
座るところが、それほど固くなかったので
よかったのかもしれません。
ラクダに乗るのに慣れてきたので、
写真を撮ろうと思ったのですが、歩いて
いるラクダの背から写真を撮るのって、
けっこう難しいんです。
しっかりつかまっていないと、落ちそうに
なります。
特に砂山を上るときや下りのときなど。
ですからラクダの足元を見て、
「ここなら大丈夫」と思ったときに
素早く撮らないといけないのです。
このようにして、ラクダに揺られていると、
他にもラクダに乗った人達がいました。
どれも、6 人以上のグループ。
ちょっとしたキャラバン隊です。
声が聞こえてきましたが、いずれも若い
人達のようでした。
しばらくすると、ラクダから降りるよう
に言われました。
ラクダを降りて歩くと、これが思ったように
進まない。
ランニングシューズは砂が入って
歩きにくいと聞いていたので、バック
ストラップつきのサンダルなのですが・・・。
けっきょく、裸足が一番歩きやすかったです。
それでも砂に足が取られてしまい、
小さな砂山でも上っていくのは大変でした。
ラクダ引きの彼は、砂山をいとも簡単に
上ったり下ったりしていたのですが、
これはやはり慣れでしょう。
彼にこの山の上から呼ばれて、上って
いったのですが、わたしが途中で放棄した
ため、戻ってきてくれました。
そして彼の後に続いてまた上ったのですが、
砂に足が取られ、ついて行かれない。
途中で手を引っ張ってもらいながら、
やっと砂山の頂上にたどりつくことが
できました。
山頂に着いたときは、達成感がハンパ
なかったです。
砂漠ってテレビで見て、ほとんど平らなの
かと思っていましたが、山がとても多いんですね。
山といってもそびえたつほどの大きさでは
ありませんが、それなりの高さはあります。
それにときどき、強い風が吹きます。
その風と共に砂が舞い上がるので、
写真を撮る際、スマホに砂が入り込むのも
わかります。
砂漠に来るときは、やはり防砂塵に優れて
いるビニール袋を使ったほうが安心です。
そこからまたラクダに乗って、今度は
さきほどの山より、もっと高い山に上る
ことになりました。
その山頂から、サンセットを見るのです。
周りを見ると、すでにいくつかのグループが
山の頂上に座っているのが見えました。
でも、頂上にたどり着くまでが、またまた
一苦労。
頂上に着いたときは、息も絶え絶えでした。
頂上に座り、夕日が沈むのを待ちます。
これは、この砂漠ツアーの見どころのひとつ。
夕日が、徐々に砂漠に沈んでいきます。
真っ赤な夕日がゆっくりと沈んでいく様子は、
まさに絶景でした。
彼が、夕日を入れて写真を撮ってくれました。
ただこのとき雲があったせいで、砂漠に
沈むより前に、雲の中に入って見えなく
なってしまいましたが・・・。
しばらくそこで、広大な砂漠の壮大さを
味わっていました。
ラクダは、下のほうでおとなしく座って
待っています。
砂山の頂上から降りるとき、
彼が砂の上に 1 枚の布を敷き、その上に
座るように言われました。
わたしが座ると同時に、彼がその布を
下から引っ張ります。
すると・・・、
この布がソリに変身。
サンドスライダーを楽しむことができました。
そして、ラクダのいるところに戻りました。
待ちくたびれたようです。
繋いでいるわけではないので、逃げることは
ないのか聞くと、そのようなことはなく、
いつまでも待っているとのこと。
賢いですね。
またラクダは、3 ヶ月間は水なしでも、
生きられるようです。
水なしで生きていかれる動物なんて、
ラクダぐらいでしょうか。
砂漠のテント
でも、ここまでは良かったのですが、
この後、彼と少し気まずい雰囲気になって
しまったのです。
ラクダの傍に行くと、彼はラクダの背から
ひとつの袋を取り出し、わたしにそこに
座るように言いました。
言われたとおりに砂の上に座ると、
袋から化石と小さな小瓶を出して
砂の上に並べました。
小瓶には、砂が入っています。
化石は、この傍で発掘されます。
ですからこの近くにある “エルフード”は、
“砂漠のオアシスの町” または “化石の町”
として知られています。
ここには、化石を売っているお店も多く、
化石博物館もあります。
ここに来る途中にも、化石を売っている
店がところどころにありました。
またこの小瓶に入っている砂は、まぎれも
なく、このサハラ砂漠の砂でしょう。
「これらを買わないか」と言うのです。
これが彼のお小遣い稼ぎになっているのは
わかりますが、その前に・・・。
わたしが現在いるところは、サハラ砂漠。
そのサハラ砂漠の砂の上に座っているのです。
そんなところで、誰が日本円で1000円
近くもする、小瓶に入った砂を買うと思います?
これが、宿から出発寸前のツアー客なら、
「想い出に!」と買うかもしれませんが、
わたしは翌日 1 日フリー。
砂漠の砂が欲しければ、いつでも取りに
来られます。
まして宿は目の前ですし・・・。
どちらにしても、砂漠の砂の上に座っている
人に、これを売りつけるのは間違いでしょう。
また化石ですが、今回、わたしが使って
いる航空会社は格安航空。
機内手荷物の重量は、8 キロまで。
わたしのバッグは、すでにギリギリに
近い状態。
そのうえ、帰る前にアルガンオイルと
サボンノワールを買う予定なので、他の
物はいっさい入りません。
それを告げると、化石は重いので諦めた
ようですが、砂の入った小瓶を勧めてくる
のです。
小瓶から砂を少し出し、
「これなら入るだろう」と言うのです。
こんな少量の砂を出したからといって、
重量が変わるとは思いませんが・・・。
「悪いけど・・・」と言って断りました。
すると彼は、黙ってそれらを袋に戻しました。
あきらかに不機嫌そうです。
夕日が沈むと、気温も下がってきました。
彼に促され、ラクダに乗ります。
そこから、テントに向かいました。
どちらも黙ったまま。
今まではわたしひとりだったため、
けっこう会話がはずんでいたのですが・・・。
とても気まずい雰囲気。
でもわたしは、客です。
彼の機嫌取りをする必要はいっさいありません。
遠くに黒っぽいテントが、いくつか
見えてきました。
テントの近くまで行くと、ラクダから降り
るように言われました。
どうやら、ここが宿泊するテントのようです。
でも、人の気配がありません。
そのとき遠くの方から、ひとりの男性が
手を振って、なにか叫んでいるのが見えました。
それを聞いた彼は、わたしにラクダに乗る
ようにと言い、わたしがラクダに乗ると、
今来た方へ戻っていきます。
「戻っていく」と書きましたが、そのような
感じがしただけで、じっさいは違う方向に
向かっていたのかもしれません。
なにしろ、どこも砂山ばかり。
わたしは、方向感覚ゼロに近い状態。
ラクダに揺られながら、
「彼はこの砂ばかりのところで、どのよう
に道を把握しているのだろう」と思っていました。
落ちているラクダの糞を目印にして
歩いているのかと思いましたが、そうでも
なさそうです。
やはり砂漠の民の勘なのでしょうか。
しばらくして、他のテントに着きました。
そこに入ると、中から 3 人の男性が出てきて
迎えてくれました。
テントはいくつか設置されていましたが、
そのうちのひとつに案内され、そこが
わたし用だとのこと。
中は広く、4 ~ 5人泊まれるほどの大きさ。
これはわたしが使ったベッドですが、他にも
この大きさのベッドがひとつと小さな
ベッドがありました。
トイレは、外に設置してあります。
安い砂漠ツアーだとトイレはなく、
自然の中で用を足すようですが、
わたしはトイレ付きに申し込んでいました。
この大きなテント、ひとりで使えました。
といっても、寝るだけでしたが・・・。
ラクダ引きの彼にチップを渡そうと
テントを出ると、すでに去った後。
チップを渡し損ねました。
翌日、彼が来るのかわかりませんが、
彼が来ればチップを渡せます。
でもさっきのことがあったので、翌日も
彼だと、また気まずい雰囲気になるのかな~
と思ったり・・・。
でも「明日考えればいいか」と思い、
テントに戻りました。
テントに戻り、リュックの中の荷物を
広げていると、食事の用意ができたと
呼びにきました。
わたしのほかに、女性がひとりいました。
聞くと、今夜はわたしたち二人だけのようです。
先ほどすれ違ったグループは、他のテント
に行ったのでしょう。
その女性は「スーザン」と言う名前で、
アメリカ人。
歳は 71 歳とのことでしたが、細身のためか、
歳よりも若く見えました。
ミュージシャンのようで、サクソフォン
奏者でした。
この女性と話をしていると、一緒に食べるか
もしくは別々のテーブルで食べるか聞かれ
たので、一緒のテーブルに用意してもらう
ことにしました。
用意された料理は、タジン。
砂漠ツアーで出される食事は、ほとんど
タジンのようです。
写真の男性がこのテントの責任者。
また彼はシェフでもあり、彼が作った
タジンはボリュームもあって、美味しかったです。
モロッコサラダとフルーツがついていました。
他にお客もいなかったせいか、
彼もわたしたちのテーブルに座り
会話に加わってきました。
彼は流暢に、フランス語と英語を話します。
そこでスーザンが彼に何か国語を話すのか
尋ねたら、7 か国語を話すようです。
彼はベルベル人で、親はノマドのようです。
『ノマド』とは、家畜(羊や山羊など)の放牧で
生計を立て、定住地を持たず、季節ごとに
移動する人たちのこと。
彼はこのテントの仕事が終わると、母親の
いるところに帰り、ノマドの生活に戻ると
言っていました。
彼の母親は今でもノマドの生活をしていて、
ベルベル語しか話せないようです。
ここで彼が作っているタジンは、母親の味。
小さい頃から母親の手助けをしていたので、
自然に作り方を覚えたと言っていました。
また彼は、とても物知りでした。
スーザンが「マラケシュでガイドの話を
聞いたが、イマイチ、モロッコ人のルーツ
がわからない」と言ったら、そのルーツを
説明してくれました。
わたしは年代とかあまり興味がなく、
まして英語だったので、しっかり聞いては
いませんでしたが、スーザンは「あなたの
話を聞いてよくわかった」としきりに
感心していました。
食事をしながら、しばらくスーザンと
話をしていたのですが、そのとき、
スーザンから聞いた話で、あることが
わかったのです。
これはある意味、ちょっとショックでした。
以前のブログで、”砂漠ツアーに行く人が
他に見つからなかった」と言われたのが
ほんとうかどうか” と書きました。
このことです。
この話は、次回のブログにてお伝えしますね。
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