モロッコ放浪の旅 ⑩・世界遺産 アイト ベン ハッドゥ

日干しレンガの城塞化した集落

砂漠に別れを告げ、長距離バスにて、
ワルザザードに午後 3 時半ごろ到着。

そこからグランタクシーに乗って、
”アイト ベン ハッドゥ”に・・・。

途中で子供連れの 3 人が降りましたが、
周りを見ても何もありません。
家までは、けっこう道のりがあるようです。



30分ほど走ると、丘の斜面に佇む
集落(クサル)が
見えてきました。

ここが『アイト ベン ハッドゥ』です。

「アイット・ベン・ハッドゥ」とも呼ばれて
いますが、このブログでは、
ここでは「アイト ベン ハッドゥ」で、
統一させていただきます。


ここは村全体が要塞になっており、
このような村は“カスバ”(城塞)と
呼ばれています。

集落を城壁で囲み、見張りの塔を建て、
集落の入り口となる門は、一ケ所のみ。

銃口用の窓もあります。


盗賊などの侵入者や外敵に備え、集落の
通路は狭く複雑に入り組んでいて、迷路の
ような造り
になっています。
そのため、敵が侵入したとしても、容易に
攻略されることはありません



「アイト ベン ハッドゥ」は、17 世紀に、
先住民のベルベル人によって築かれました


この【名前の由来】は、
『アイト』は、住民の民族グループの名称

「ベン」が息子、「ハッドゥ」は指導者を意味し、
『アイト ベン ハッドゥ』は、
「ハッドゥの息子たちによって築かれた集落」
となります。

粘土や日干しレンガを使った伝統的な
居住スタイル
で作られており、モスクも
あります。



また、丘の上には籠城戦に備え、食糧
貯蔵庫も
建てられています。


『アイト ベン ハッドゥ』は、
カスバの中でも特に保存状態が良く、
古代の建築技法を伝える貴重な文化遺産
あるとして、1987年、世界遺産に登録されました。

ちなみに、現在多くの住民はここを離れ、
便の良い川向かいにある新市街に住んでいます。

それでもいまだこの要塞村の中で、電気や
水道のない、昔ながらの生活を続けている
家族も数組います。



予定を変更して延泊にしたが・・・

宿の屋上テラスから

タクシーを降りて、まずホテル探し。
アイト ベン ハッドゥから近いところにある
宿に行くと、「いっぱいで空き部屋は一部屋
しかない」と言われ、料金を聞いたらこれが高い。


そこで近くの宿を探したところ、
運よく部屋が見つかりました。

パスポートを出すと、「日本人は初めて」
ということで歓迎されました。


部屋に案内されて窓から外を見ると、
目の前にアイト ベン ハッドゥが見えます。

宿の中はどちらかというと、薄暗い
感じ。
梁を見ても天井を見ても、昔からの
建物をそのまま使った感じ。

昔ながらの天井と梁
屋上のテラスに続く階段


その後、ミントティーが振舞われるという
ことで、屋上に行きました。



屋上のテラスから、目の前にアイトベン
ハッドゥが望めます。



ミントティー飲んでいると、サービスを
している男性から、どのくらい滞在するか
聞かれました。

彼の名前は “モハメッド”。
これからよく登場するので、”モハさん” と
呼ぶことにします。


わたしの予定は、1 泊です。
ネットで調べたら、それほど大きな村では
ないので、3 時間もあればすべて見られると
書かれていたからです。

そのため、日帰りで来る人も多いようです。

ただ、夕日に染まるときが素晴らしいと
書かれていたし、朝早い時間なら観光客も
それほどいなく、ゆっくり見れるとも
書いてありました。

わたしは駆け足でなくゆっくり
見たかったので、1 泊することにしたのです。

結果的に、1 泊してよかったです。
朝日に照らされた「アイト ベン ハッドゥ」
ほんとうに素晴らしかったです。
この景色は、泊まらないと見ることができません


予定では、到着が遅いので閉まる前に
ざっと見学して、翌日午前中にゆっくり
周るつもりでした。

そして午後、ワルザザートに戻り
次の目的地に出発です。


この返事を聞いたモハさん、
「アイト ベン ハッドゥからちょっと離れた
ところに、洞窟や見どころがたくさんある
んだけれど、ほとんどの観光客は時間がなく、
ここを見ないで帰る。ほんとうに勿体ない」
というのです。

この宿に泊まった若い人達も、1 日伸ばした
と教えてくれました。


現地の人がいうからには、そうなのでしょう。
でもわたしは、バスのチケットを既に
購入済み


今までは延泊する可能性もあると思い、
バスのチケットは出発直前に買っていました。

ただ、ここはそれほど見るところがない
ようでしたし、小さな村なのでバスの
チケット売り場もないと思い、
ワルザザードから出発の分と、その先の
分までチケットを購入していたのです。


それを話すと、「ここにもCTMのバスの
事務所があるので、日にちを交換してきて
あげる」と言うのです。

なんて親切な人なんだろうと感心しながら、
彼に 1 日ずらしてもらうよう頼みました。


屋上で待っていると、彼が帰ってきました。
でも「ここの事務所では、日にちの変更が
できない」と言うのです。


それなら仕方ないと思っていると、
「ワルザザードに行けば可能だから、
今から行って来る」と言うのです。

ワルザザードまでは、グランタクシーに
乗って行かなければなりませんし、時間も
お金もかかります。

最初の予定は 1 泊だったので、そこまで
しなくても・・・
と申し出を断ったのですが、彼は、
「せっかく来たのだし、どうせなら
ゆっくりすべて見て行ったら? 買い物も
あるから、問題ない」と言うのです。


それならと、彼の言葉に甘えることに
しました。
宿も、部屋はあるようです。

なんてお客思いのいい人なんだろうと
あらためて感謝していました。


そしてそれなら観光はすべて翌日にしよう
と思い、その日は見学はせずに、屋上で
ゆっくりしていると・・・。


隣の屋上から、「部屋は見つかった?」
と声がするのです。
声のした方を見ると、さきほど行った宿の
人です。

ふたつの宿は、隣接して建っていました。
「この宿にしました」と答えました。


じつはこの隣の宿、満室と言っていました
が、違うような・・・

わたしはお茶を飲んだりして、長い時間
屋上にいたのですが、となりの宿の屋上に
来たのは一組のカップルだけ。

今は、シーズンオフです。
わたしが飛び込みの客だったので、
部屋代を吊り上げるため、満室と言ったの
かもしれないな~と思いました。


モハさんが、帰ってきました。
頼んだとおり、バスの乗車日を 1 日ずらして
くれました。
変更のための追加料金と、タクシー代を
払いました。

それも「帰りは乗り合いではなかったので、
高くなったが、ふつうの料金でいい」と
いうのです。

ここでまたまた、感謝の気持ちを丁寧に
伝えたのです。


ただ・・・
これがこの後、いざこざの原因
なるとは、このときは思ってもいませんでした。



思っていたのと話が違う

夕食はテラスか屋内、どちらが希望か
聞かれたので、テラスにしました。

夜 8 時前に行ったら、わたしひとりでした。

メニューは、クスクス
このクスクスも彼が作ったようで、今まで
食べたクスクスの中で一番美味しかった
です。

ハリッサはありません。
今までクスクスを注文しても、ハリッサや
唐辛子がついていないところがあったので、
モロッコではクスクスに唐辛子は入れないのか
聞いてみました。

すると、かけるブイヨンが美味しければ
唐辛子は入れない
とのことです。

欲しければ持ってくると言われましたが、
美味しかったので、彼のいうとおり、
唐辛子無しでいただきました。


そのとき、彼がさきほどの “観光スポット”
の話をしてきたのです。
わたしも、行き方を教えてもらおうと思って
いました。

でも彼の話を聞くと、思っていたことと
違っていました。

彼が言うには、
「タクシーで 10 時頃出発し、宿に帰って
くるのは 3 時過ぎ。
その後にアイト ベン ハッドゥに行っても、
日没まで開いているので、じゅうぶん見る
時間がある」と言うのです。

わたしはアイト ベン ハッドゥをゆっくりと
見学したかったのですが、これだと
決められた時間内で周らなければなりません。

またそこは、彼が案内すると言うのです。
「もしかして、ツアーの売り込み?」
と思っていたら、中年の夫婦が現れました。

彼は「あの人達にも聞いてみる。
もし一緒に行けば、タクシー代が安く
なるから」と言うのです。

「やっぱりツアー・・・」と思っていたら、
彼は食事を運びながら、その夫婦に話を
持ちかけています。

そのうち、他のお客が食事に来たので、
彼も忙しくなり、夫婦の傍を離れました。


しばらくして、その夫婦から彼のツアーに
行くのか聞かれました。

じつはわたしはそのとき、手持ちの現金が
少なかったのです。
なぜかというと、本来ここは 1 泊の予定。
ここではあまりお金を使うところもないと
思い、それほど現金を用意していませんでした。

モロッコでは何があるかわかりませんので、
現金はいつもぎりぎりか、ちょっと余裕が
あるくらいしか持っていません。


それが延泊になり、当然、食事代も
かかります。
このツアー料金は聞いていませんが、
場合によっては、足りなくなる可能性が
大いにあります。


そのうえ、歩いてみてわかったのですが、
ATMは、村の外れにひとつあるだけ
それもATMだけがポツンと置かれている
だけで、そばには銀行もなにもありません。

モロッコでは、ATMが故障していたり、
またカードが吸い込まれて出てこなかったと
いうことを聞いたこともあり、このような
ところでは、なるべく現金は引き出したく
ないのです。

ですから、「まだ決めていない」と答え、
彼らは行くのかどうか尋ねると、
「ツアー料金次第かな」との返事でした。
やはり、行くには料金次第ですよね。


その後、風が出てきたので部屋に戻りました。

夜になると、アイト ベン ハッドゥの
明かりは消え、真っ暗になります。
ここでも砂漠のような星空が見えるかと
思い、屋上に行ったのですが、残念ながら
雲がかかっていました。

期待した星空は、無理なようです。
部屋に戻り、寝ることにしました。



翌日、朝食を取るため、屋上のテラスに
行きました。

隣の宿は、屋上には誰もいません。
「ほんとうに満室だったの?」
疑いたくなります。


わたしがテーブルに着くと、4 人組の
若い男女が後から来ました。

そして、後から中国人の女性がひとり。
彼女に一緒のテーブルに座っていいか聞か
れたので、もちろん承諾。

彼女は友達と一緒に来たようですが、
他の友達はまだ寝ているようです。

前日にアイト ベン ハッドゥを見学したと
いうので聞いてみると、3 時間あれば
十分見れるとのことでした。


このように話をしていると、モハさんが
朝食を持って現れました。
そして、彼女に「今日は朝食は 10 時まで
なので、友達に早く来るように伝えてくれ」と
言うのです。
前日、彼女達は 11 時に朝食を取ったようです。

彼の意図を知らず、「10 時までとは、
ずいぶん早いな」と、思いました。


すべてのテーブルに朝食を用意した後、
モハさんがわたしに「何時に出発するの?」
と聞くのです。

そのとき、時間は 9 時過ぎ。
「10 時半頃かな、アイト ベン ハッドゥは
それほど時間がかからないようだし」と
答えると、「アイト ベン ハッドゥに
行くの? 昨日話した観光スポットは?」と
聞くのです。

そこで、「あなたが案内するツアーの
こと?」と聞くとそのようです。


でもわたしは、まだ料金を聞いていません。
そこで料金を聞くと 200 ディラハム。
これにタクシー代です。
もちろん昼食代もかかります。

これを聞いて、断りました。
すべて払ったら、翌日のタクシー代が
足りなくなってしまいます。


すると彼は、「行かないなら、昨日行って
くれればよかった。
自分の予定も狂ったし、それならバスの
チケットを変えにも行かなかった」と言うのです。

これには、わたしも反論。
「バスのチケットを交換すると申し出て
くれたとき、わたしはそこにひとりで
行かれると思っていたの。
あなたが案内するとわかったのは、昨日の
夕食の時点でしょ。

それに今の今まで、料金は知らされて
いなかった。
ツアー料金がわからないのに、行くと
返事をする人はいない」と・・・。

これを聞いて、彼も、多少言い返して
きましたが、こちらは宿泊客ですし、
周りに他のお客さんもいます。

隣に例の夫婦が座っていましたが、
彼らはカナダ人でフランス語がわかります。

彼もそれに気が付いたようで、しばらくして、
「OK。問題ない」と言って、下に降りて
行きました。



映画のロケ地として有名なアイト ベン ハッドゥ


10時半頃、宿から出ようとすると、
モハさんが出口にがいました。

彼はわたしに「急に行かなくなった理由は、
朝 話をしていた中国人の女性のせいか?」
と聞いてきました。

彼女とはそんな話はしていないので、
「この女性とはそんな話はしていない、
手持ちの金額が少ないから」だと答えました。

でもこのとき、ホントに彼のいうような
観光スポットがあるのかな?とちょっと
疑問に思ったのですが・・・。

ただもうひとりの受付にいた男性も
「この辺りも含め、砂漠地帯は車で周った
ほうがいいよ」と言っていたので、見る
ところはいろいろあるのかもしれません。


この後、彼はアイト ベン ハッドゥまで、
案内すると言うのです。
アイト ベン ハッドゥの入り口はふたつあって、
ひとつは有料で、もうひとつは無料とのこと。

これはわたしも、ネットで調べて知って
いました。
川を渡って行くと有料で、上にかかっている
橋から行くと無料
のようです。


でも彼は「川から行っても、無料で入れる
ところがある」と言うのです。
宿からは、川を渡って行く方がだんぜん近いです。

川といっても、以前は大きな川が流れていた
ようですが、今はご覧のとおり、水はほとんど
ありません。


「もしかしたら、アイト ベン ハッドゥの
ガイドをするつもりなのかな?」と思い、
それくらいなら払えるので、案内して
もらうことにしました。


彼はその後は今朝のことは何も言わず、
案内してくれました。

そして「アイト ベン ハッドゥにはまだ
住んでいる家族がいて、運がよければ
彼らの家でお茶を飲ませてくれるかもしれない。
そうしたら少しチップをあげたら喜ぶよ」と。
これが彼らの収入になっているとのことです。


集落の入り口に来ると、「ここが住民しか
知らない入口だよ」と指さすのです。
有料の入り口から、それほど離れては
いませんが、確かにわかりにくいです。


お礼を言うと、彼はそこから帰って
いきました。
ガイド目的ではなかったようです。

「疑って悪かったな。やっぱり親切な人
だったんだ」と感謝して、そこから歩き
始めました。


丘の上にある食糧貯蔵庫を目指して、
階段をのぼっていきます。
砂漠地帯は、とにかくのぼるところが多く、
足が鍛えられます。

途中で、同じ宿のカナダ人の夫婦に
会いました。
彼のツアーに行くのかと思っていたので、
意外でした。


丘の上にたどり着くまでに、多くの観光客に
会いました。
シーズンオフでこうなら、シーズンのときは
行列ができるでしょう。
また、ガイド付きのグループも多くいました。


マラケシュから出発の砂漠ツアーに
申し込むと、ワルザザードやこのアイト
ベン ハッドゥに寄ります。

どちらも映画のロケ地として有名で、
アイト ベン ハッドゥは、

・ アラビアのロレンス

・ グラディエーター

・ ハムナプトラ

・ バベル

など、数々の名作映画の舞台となっています。


次回のブログでは、アイトベンハッドゥの
魅力について、画像入りでご紹介したいと思います。

そしてモハさんとの間に起こったいさかいの
ことも・・・。




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